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耳子の話
私は一度、「忘却の彼方」についてじっくり、頭をつかって、考えたことがあります。
「君は頭で考えるのか」船長に言われました。私も確証はありません。でも、その「頭をつかって考える」と、頭の辺り、額の裏辺りがぐちゃぐちゃ熱いような感じになってくるから、きっとそう。
船長は、自分は頭の中がぐちゃぐちゃすることはないと言っていました。きっと船長の大きな頭の中には、しわくちゃの脳みそと一緒にファンが入っていて、少しでも熱くなるとそれが回るんだと、そんな図が浮かびます。しかし私の頭蓋骨はクーラー内蔵ではないので、やっぱり額の裏をぐるぐる考えます。
私の脳みその真ん中に、私の案中のこと達が入っている部屋があって、その中に棲んでいるうちの一個がそこから追いやられて、というより、忘却の彼方という言葉は何となくスナフキンのような響きがするから、きまぐれに出ていって、降り立つボーキャク平原の地平線まで行って、スナフキンのハーモニカの音が夕日に聞こえなくなった所が「忘却の彼方」。さすらいにいなくなったその時は初夏の頃だからいいけれど、ふらりと帰ってくるときにはもう間に合わないのですから、困ってしまいます。しかもそのさすらい役は誰にだって務まるのです。私や三上君、船長だって、忘却の彼方へはいつでも行けるのです。
そんな話をし終わると三上君は「うん、うん、そうか、耳子ちゃんはいいバニーちゃんだね」と目を細くして笑いました。「また来るよ」トマトジュースの代金ぴったりを置いて、お店を出てしまいます。
何か話し忘れたことがあるような気がしました。
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