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イチゴジャム








もうすぐ何もかも死んでしまう中庭、パステル色、むせかえるような甘い匂いの中に寝そべって、微睡むわたしたちの記憶



「イチゴジャムのね、果肉だけが、好きなの。つぶつぶの果肉のところだけが食べたいの」
「わたし、どろどろのところが好きだよ」
「どうして」
「どろどろのところが、イチゴがジャムになってるところだからだよ」
「ふうん」
「…ねえ、わたしがどろどろのところもらってあげる。果肉のところは食べていいよ。ねえ、いつもふたりで同じびんを空けよう」
「いつも?」
「そう。いつも。ふたりで一緒に、小さくてかわいいびんのイチゴジャムを買ってきて、おやつのときに、一度でぜんぶ食べちゃうの。びんからジャムをすくうスプーンを、そのまま口に運んでいいんだよ」
「ふふ、しあわせだね」
「うん、しあわせ」
「かわいいびんがいっぱいたまっちゃうね」
「うん、そうだね」
「そしたらそのびん、うちでつくったジャムをまた入れてもいいけど、型にして、卵のプリンつくろうよ、ね」
「うん、うん」
「銅のお鍋は重いけど、がんばってカラメルのソースもつくろうね。プリンも、わたしたちふたりだけで食べるの。ぜんぶふたりで………ねえ、どうして泣いてるの」
「…しあわせだからだよ」
「しあわせなのに泣いてるの」
「そう、しあわせだから泣いてるの」
「ふふ、変なの」
「うん、そうだね」
「…ねえ、しあわせだね」
「しあわせ。すごくすごくしあわせ」




























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