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いい人





どっかのヒステリックな悲しみに飲まれないよう
たわいもない話をするふりをするよ
君のそんな優しい酷い甘いむごさも
僕の世界を思うかわいい冷静も
実はそこまで心が埋まってた訳じゃなくて
今になってみてうずもれそう
 
つらいかな
そうでもないかな
いい人だからなあ
僕も君もさ
君は知るよしもない
 
あのときは只面倒だったけど
だからこそ別にぎゅいと締めつけられることもなく
僕はなんも優しいことなんかないだろ
なんもしないでいる自分がすっぱくってさ
本当にそこまで心が埋まってた訳じゃなくて
でも気が付いたら目を閉じられない
 























 

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モーテル





藤の花が咲く小路を 通り抜ける夢
君に語るために脚色しよう


今になってどうして
おかえり
お休みなさい
壁に潰され死ねるでしょう
部屋のドアを開け 崩れ落ちそうなら
頼りない私の腕をとって か細い声で囁こう
「甘い声をあげた方が負け」


路をぬけると ほら一面に
光が空に向かい一斉に散るところ


甘い声をあげた方が負け!


つまらない話をきかせて 満足してたら
わたしが見えなくなっちゃうよ


そのままのあなたでいいのにね
藤の花はとても綺麗だけど
あれは妖怪の卵だから 触るのはおよしなさい


お願い いなくならないで
簡単に招かれないで
短い夢の話をして
あとは黙っていよう
わたしが見えなくなっちゃうよ






























りり





はじめて会ったとき
柔らかい髪をのばしていた
冬には切って
緩いカールが丸くゆれる

細い足が濃紺の
短いスカートをはく
血の通った白い膝
皿が小さいのだ

そばかすのある頬は
すぐに紅く染まりがち
体はつよくないが
見えないところで気を張ってる

好きな音楽をきかせて
桃のキャラメルをくれる
笑って「また明日ね」って
言ってくれる

今まで出会った全ての人類より
可愛いんだと
言ってもきっと
いつも通りに笑うんだろう































その気になれば





会いたいときに向かいの猫に会える
飲みたいときにクランベリージュースが飲める
夢のような夢の生活を夢みたことは
一度だってないんだって
驚くかな

世界一美しい鳥はあまり鳴かない
世界一美しい花はもうこの世にないよ
僕たちはいつも手遅れで 
何にも届きやしないんだ

君の言う台詞は 誰に宛てたのでもない
しかと目の奥を見つめ 話してみろよ
どうしたって上手くいきそうもないのだけど

でも何を思って君と二人でいた訳じゃない
今までの事ども
ごめんなさいしたのはどっちだった

世界一美しい鳥はあまり鳴かない
世界一美しい花はもうこの世にないよ
僕たちはいつも手遅れで 
何にも届きやしないんだ

浮いて出た台詞を馬鹿にして泣いた
そんな嘘ですら君は 拒まない
こんな気持ちにこんな気持ちも湧く
言葉も浮かんで罠にかかっている





























距離と観察





人を馬鹿にしたような 表情というものの
評価の高さは どうやら特異的であるようだ

首と顎を流れる線も 目じりの切れ方も
全部があの子のものなんだよ 至極当然のこと

まさか切り取ることも叶わないから
好きでも 
この微熱は向かうところが違う

ハート柄のボクサーを履いてた あの子の髪は
夏が終わり 冬になると 
ふわふわに生えかわった

そこそこに長身痩躯 腰に手をついて
たそがれるふりで本当は 
晩ごはんのこと思い巡る

だれかに似た流し目 白い肌が
好きでも それでも
何か違うと分かってる

つっぷしている仲間のうちの
一人の意図せず撃った弾は
活字をまわすことで こっちに流れてきた

遠くから 見ていたのに やめてくれ

あんまり傍に座られてしまった
近さに 目が くらむけど

まさか切り取ることも叶わないから
好きでも 
この微熱は向かうところが違う 


























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